小泉首相・神崎代表・岡田代表宛書簡


内閣総理大臣

 小泉純一郎 様

 

 私ども、文芸評論家、作家/脚本家、オペラ演出家、作曲家など芸術に関わる仕事を続けてきたもの同士が集まり、結成した「ガンジーの会」では、ガンジーの非暴力の精神に則り、「市民の不承認」の意志表示行為として、自衛隊のイラク派遣に反対し、一日も早い撤退を求め、一般市民にも呼びかける形で、リレー式のハンガー・ストライキを続けてきました。今年1月26日自衛隊がイラクへ出発した日より今日に至るまで約10ヶ月間、延べ700人の市民が、全国各地から参加し、一日も欠かすことなくハンガー・ストライキを続けております。

 

貴総理大臣がお眠りになっている間にも、空腹に耐えながら、イラクの平和回復を願い、自衛隊のイラクからの撤退を求め、平和憲法の護持を祈る人間が、一日も欠かさず10ヶ月間、つながっているという事実は、新しい形の市民のレジスタンス運動として、歴史的意義と重みを持つものと信じております。

 

 さて、新聞等の報道によりますと、貴総理大臣は、近く期限が切れる自衛隊のイラク派遣を一年間延長する方向で検討されているとのこと、私たちは、以下の理由で、強くそれに反対します。

 

1−武装軍隊として自衛隊を海外に派遣することは、憲法第九条の条文規定に明らかに違反し、これ以上自衛隊のイラク派遣を認めることは、第九条を放棄した形での憲法改悪を、実質的に認めてしまうことになるから。

 

2−イラクに大量破壊兵器がなかったこと、さらにアルカイダとのつながりもなかったことが明確になった今、アメリカがイラク戦争を正当化する「大義」は完全に崩壊してしまった。また、アナン国連事務総長も指弾するように、アメリカのイラク攻撃は国連憲章にも違反していることにもなる。にもかかわらず、自衛隊の派遣を延長することは、間違った戦争を二重に支援することになり、イラクの人々の日本に対する不信感を募らせ、これまで培ってきた友好の絆を著しく損なうことになるから。

 

3−さらに、その結果、香田さん殺害事件に見るように、自衛隊がイラクに駐留する限り、イラクの復興支援に関わろうとする日本人が人質に取られ、殺害される危険性が一層高まるから。

 

4−アメリカが、軍事力によってイラクをコントロール下に置こうとすればするほど、イラク国内の反米武装勢力はゲリラ化し、アメリカは、かってのヴェトナム戦争のときのような、出口のない泥沼にはまり込んでいく。さらにまた、武力によってテロリストを根絶するといいブッシュ大統領の戦略は、逆にテロリストを増やすという皮肉な結果をもたらしている。そのアメリカにこれ以上追随することは、サマワに駐留する自衛隊そのものがゲリラの攻撃目標となる危険性を一層高くすることになる。

 

5−これまでにも現地取材したジャーナリストから報告されているように、政府は、「イラク復興支援」を大義名分に、自衛隊をサマワに駐留させるために、莫大な資金を投入しているが、その割には、自衛隊は、イラクの復興支援に実効的成果を上げえていない。政府は、イラクの復興支援が平和的な方法によって可能になるような方向で、日本に何ができるかを考えるべきで、自衛隊の派遣に要する資金を、新潟の地震被災者の救援資金に当てるべきである。

 

以上の理由から、私たちは、イラクのため、日本のため、アメリカのため、そして世界のためにも、自衛隊のイラク派遣延長に断固反対し、今臨時国会で、派遣延長が決定される時には、集団ハンストに入る覚悟を固めております。

 

もし、貴総理大臣が、アメリカとの友好・同盟関係を大切なものに思い、日本の対外関係の基軸に置くのなら、国際世論に反して暴走するブッシュ政権に必要な時にはブレーキをかけ、「ノー」と言えることが、真の友人であり、同盟国としての務めではないでしょうか。今、ブッシュ大統領に無批判に追随することは、決して日本の「国益」にはならないと、私たちは信じております。

 

どうか賢明なる総理大臣におかれては、憲法九条に違反して、自衛隊がイラクに派遣されているかぎり、毎日この日本のどこかで何人かの人間が、空腹をかかえながら、それに反対し抗議し続けているということを心に留め、将来に禍根を残さない決定を下されるよう、心からお願い申し上げる次第です。

 

2004年11月11日             「ガンジーの会」
                         代表  末延芳晴





     

  
                                            

 

  a hunger strike reray marathon