「ガンジーの会」からの声明

              香田さんの死を悼んで

私たちが恐れていたことが、ついに現実となりました。「イラク・アルカイダ機構」に拉致・拘束されていた香田証生さんの遺体が、バグダッド市内で、首を切り落とされるという無残な姿で発見されたのです。

 

 私たちは、香田さんを拉致し、人質として拘束し、「48時間以内の自衛隊のイラクからの撤退」という条件を出しながら、日本政府と交渉の道を開こともないまま、期限が切れるか切れないうちに、首を切り落とすという、およそ人間性のかけらも感じられない残虐な方法で香田さんを殺害した「イラク・アルカイダ機構」に強く憤り、抗議したく思います。このような一方的で、残虐非道な暴力の行使は、「テロリストの要求に屈することは出来ない」、「テロリストの脅威から世界を守る」というブッシュ大統領や小泉首相の言い分に根拠を与え、世界中に暴力の連鎖を引き起こしていくことにしかならないからです。

 

現に、小泉首相は香田さん殺害の責任を「イラク・アルカイダ機構」に転嫁し、マスコミもそれに同調しようとしています。だがしかし、一層厳しく責任を問われなければならないのは、香田証生さんという前途ある青年が殺されることを知りながら、自衛隊をイラクから撤退させず、その殺害を黙認していた小泉首相とその内閣、そして自民・公明の連立与党であることは論を待ちません。

 

信じられない話ですが、新聞の報道によると、遺体が香田さんでないことが判明した後、小泉首相は、知人の結婚式に出席したといいます。つまり、小泉総理大臣は、敵の本気度(殺意)をきちんと正確に読み取ることがないまま、香田さんが殺害されていなかったことで、この先、殺される 気遣いはないと早合点(安心)して、結婚式に出てしまった。あるいは、一人の若者の死など、どうでもよかった?・・・・・。

 

いや、もっと言えば、マスコミも世論からも、「危険と分かっているところへ、なぜ行ったのだ!」と、香田さんの軽率な行動をバッシングする声が高まっている。ここで、香田さんが殺害された方が、国民世論をテロリスト批判の方向に導き、「テロリストと闘う」を大義に掲げ、ブッシュ大統領や自分の進めて来たイラク政策の正当性を証明できる。加えて、事件の衝撃性の故に、一時的には、自衛隊撤退の声が高まるかもしれないが、所詮は忘れやすく、「のど元過ぎれば・・・」の国民である、時間が経てば、事件のことを忘れ、逆に、海外の戦場で日本人が殺されることに対する心理的拒否反応が解消され、免疫ができる。そして、自衛隊の海外派兵、憲法改正がやりやすくなるから、殺すなら殺してくれ、その方が好都合だくらいの冷徹な政治的判断も働いているかもしれません。ちょうどそのころ、バグダッド市内で香田さんの首が切り落とされていたかもしれないというのに・・・・。

 

私たちの国のイラク政策は、このようにいい加減な判断力しか持ち合わせていない、あるいは、恐ろしいほど狡知で冷酷な政治的判断力を持った総理大臣によって決められ、遂行されてきた。香田さんの死は、そのことの不幸な結果としてもたらされたものなのです。

 

にもかかわらず、小泉首相は、例によって、新聞記者の質問に答えて、「テロリストの脅しには屈しない」と、強弁しようとしています。しかし、香田さんの死の原因が、自衛隊をイラクから撤退させなかったこと、そして、その決定を、小泉首相が武装勢力側と交渉もしないまま(あるいはできないまま)、下し、公にしてしまったことにあることは間違いありません。

 

そもそも、憲法第九条に違反して派遣された自衛隊は、アメリカ自身の調査によって、イラク戦争が大義の無い、間違った戦争であったことが判明した時点で撤退させるべきだったのです。ところが 、それをしないまま、今日まで放置してきてしまった。その結果、香田さんは拉致・殺害されたのです。

 

その意味で、香田さんの死をもたらした最大の責任は、小泉総理大臣にあると言っていいと思います。しかし、だからといって、小泉首相だけを責めているわけにはいきません。このように無責任で、詭弁(あるいは狡猾無比)の政治家を総理大臣に選び、いまだに退陣に追い込むことが出来ないでいる、私たち日本人全体が、香田さんを惨死に追い込んだ責任を負うべきなのです。

 

そのことを思うと、そして、24歳という若さで首を切り落とされるという、無残な殺され方をした香田さの無念な思いを思うと、「追悼」とか「安らかにお眠りください」などという月並みの言葉は、とても送ることはできません。私たちに、香田を慰めることはできない・・・・。

 

私たちにできることは、いや、しなければならないことは、香田さんの恐怖の叫びとそれでも誰も助けてくれなかったことに対する呪いの声を死ぬまで胸の奥で受け止めること。そして、2人目の香田さんを出さないように、具体的には、一日も早く日本自身の主体的判断によって、自衛隊をイラクから撤退させ、小泉純一郎という史上類を見ない反動的な総理大臣を退陣に追い込むべく、全力を尽くしていくことでしょう。もし、このまま自衛隊がイラクに止まる限り、第二、第三の香田さんが出てくる可能性が極めて高いからです。

 

10月31日         「ガンジーの会」代表:末延芳晴





     

  
                                            

 

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