香田証生さん拉致事件に関する緊急アッピール

 

  新聞やテレビの報道で明らかな通り、26日夜(日本時間27日未明)、イラクで日本人男性、香田証生さんが、アルカイダ傘下の武装組織『イラク聖戦アルカイダ組織』によって、拉致・拘束されました。武装勢力側は、48時間以内に自衛隊がイラクから撤退しない限り、香田さんを処刑すると予告しております。

 

  私たち自衛隊のイラク派遣に反対し、今年の1月26日から、撤退を求めてリレー式のハンガー・ストライキを続けている「ガンジーの会」では、自衛隊がイラクに駐留するかぎり、「いつかこういうことが」と恐れてきました。そして、本日、恐れていたことが現実となったことを知り、強く憤りを覚えると同時に、人質となった香田さんの安否を思い、深く憂慮を募らせております。

 

  過去二回、日本人ジャーナリストやNPO活動家が、イラクで拉致・拘禁されましたが、いづれも無事に解放されました。それは、多くの日本人が人質の無事を祈り、デモやハンストといった形で自衛隊の撤退を求める意思を表明したことについて、武装勢力が一定の評価を下したからです。にもかかわらず、小泉首相は、イラクの人々のわたし達日本人に対する友愛と信頼の情に応えることなく、自衛隊をイラクの駐留させ続け、アメリカ軍の軍事的支配と占領当地を支援し続けてきました。

 

 さらに加えて、その後、ブッシュ大統領がイラク攻撃の根拠とした「大量破壊兵器」がイラクに実在しなかったことが、アメリカ自身の調査団によるレポートによって証明されました。そして、「テロリストの脅威から世界を守るため」というブッシュ政権が掲げた大義そのものも崩れ去ることになりました。ところが、小泉総理大臣は、ブッシュ政権に追従して自衛隊をイラクに駐留させ続け、いまだにブッシュ大統領と日本の選択は正しかったと強弁しようとしています。そうした意味でも、今度の事件が、小泉首相の頑な姿勢が根底にあって起きたものであることは明らかです。

 

私たち「非暴力」を提唱するガンジーの会では、人質の無事解放を確保するために、自衛隊のイラクからの即時撤退を求め、本日、10月28日の正午から集団ハンストに入ることを決めました。

 

 同時に、「イラク聖戦アルカイダ組織」に向けては、48時間というタイム・リミットを過ぎた後も、香田さんを処刑することのないよう求めていくと共に、「暴力」によってはなにも解決せず、「憎しみの連鎖」を広げるだけであることを強く訴えていく所存です。

 

 この件に関して、小泉首はじめ政府与党は、「テロリストの要求には徹しない」と強弁し、なぜこういう事件が起こったのか、ブッシュ政権のイラク攻撃は正しかったのかどうか、などについて真摯な議論も反省もせず、ただ「テロを許すな」をオウムのように繰り返しています。驚くべきことに、民主党の岡田代表までもが「テロリストに屈してはならない」と小泉首相に同調し、さらにマスコミも同様の論調を掲げ、香田さんが処刑されても、「仕方がない」、「自業自得だ」という方向に世論を導こうとしています。

 

 だがしかし、「テロの撲滅」をかかげて展開されたブッシュ政権の世界政策は、皮肉なことに「テロを増殖させ拡散させる」結果しかもたらしていません。そんなブッシュ政権に追従して、自衛隊をイラクに駐留させる限り、今後、第三、第四の人質事件が起こり、さらに日本の内外で日本人がテロの標的になる危険性は、ますます大きくなるといわざるを得ません。

 

 ブッシュ政権のイラク攻撃が「間違った戦争」であることが判明した以上、今、日本政府の取るべき選択は、この反動政権に対して一定の距離を置き、自衛隊を撤退させるとともに、イラク国民のためになる人道復興支援を行うことだと考えます。

 

 思えば、わたし達日本人には、イラクをはじめ中東諸国との間に長年にわたって培ってきた友好と信頼の絆がありました。残念ながら、この絆は小泉総理大臣の間違った選択によって、ずたずたに切り裂かれてしまいました。しかし、まだ完全に断ち切られてしまったわけではありません。わたし達は、この絆を一日も早く把握回復するために、小泉内閣及び政府与党に改めてイラク政策の転換を強く求め、同時にまた民主党や共産党、社民党など野党各党が、自衛隊のイラク派遣延長を巡って国会で論議が進められる中、撤退実現に向けて共闘戦線を結ぶことを期待しております。

 

 政治家は、結果責任を取らなければならないといわれます。過ちを改めるのに、速すぎることもまたありません。イラク戦争が間違った戦争であることが判明した今、小泉首相は、政治家としてあきらかに間違いを犯したのです。速やかに、自衛隊をイラクから撤退させ、誤った選択を取ったことの責任を取って、内閣総理大臣の職を辞すのが当然だと考えます。

 

 もしそれが出来ないなら、小泉首相に「平和憲法」を有する日本国に総理大臣たる資格がありません。「政治家の出処進退は、政治家自身が決めること」とは、首相がよく口にしてきた言葉です。小泉首相が、自らの責任を感じて、自身の辞職、及び内閣総辞職を断行されることを強く求める次第です。

 

 

10月28日

         「ガンジーの会」代表:末延芳晴





     

  
                                            

 

  a hunger strike reray marathon