イラクで拉致拘禁された高遠菜緒子さん、郡山総一郎さん、
今井紀明さんの家族の皆様へ


 
  
 
3人の方々が拉致拘禁されて、 5日目になりますが、この間、あるときは解放が約束されたり、あるときはそれが覆され、あるときはまったく情報が途絶え、また逆に情報が氾濫錯綜したりと、事態が激しく変化する中、一日、一刻も早い家族の帰還を訴えて来られた皆様方の心労は一方ならぬものがあるとお察し申し上げます。

 私たち、自衛隊のイラク派遣に反対してリレー式のハンスト・マラソンを3ヶ月余に渡って続けている「ガンジーの会」では、拉致拘禁事件が伝えられた9日から、自衛隊の撤退期限として指定された3日間、すなわち4月9日から11日の深夜24時までを「ハンスト・ウィークエンド」に当て、会員全員が可能な限りハンストに参加、特に最終日の11日午前0時からは、15人の仲間が一斉に24時間ハンストに参加、3人の人質の解放と自衛隊のイラク撤退を求めてきました。

 また、10日の夜には、会からこの問題の解決方法について、「緊急アッピール」を公にし、日本政府に対しては「自衛隊の即時撤退」を、武装ゲリラ側には、「人質の即時解放」と「日本国民に対して、自衛隊撤退に向けて立ち上がる(具体的には小泉内閣打倒に向けて)よう要請する声明を出すこと」の二点を求めました。 そして、その翌日、ゲリラ側から、私たちの提案に沿った形で人質を解放する旨、アルジャジーラを通して声明が発表されました。 私たち「ガンジーの会」の会員は、そのことを我が事のように喜びました。 なぜなら、会員の中に今井紀明と同じ年齢で、今年高校を卒業した息子を持つ親がおり、また、私たちのハンストに高校2年生が参加したときには、全員で彼を励ましたことがあることなどから、皆様の不安や怒り、絶望、そして心労がとても人事とは思えなかった。 つまり、私たちも皆様と同じ気持ちで、人質の解放を願い、事態の推移を見守っていたからです。

 しかし、事態は、私たちが提案したような方向では解決されず、いまだ3人の生存も、所在地も確認されない状況が続いています。 こうした状況にあって、皆様は、人質解放の願いを内外に訴えるため、それこそ不眠不休の努力を続けておられます。
 慣れないテレビカメラの前で、自分たちの思いをどう伝え、世界を動かせるか・・・・あなた方のいても立ってもいられない思いと苛立ちは手に取るように伝わってきます。 確かに、今、あなた方の言葉は小泉首相に伝わってないのかもしれません。 いえ、伝わってないと断言してもいいと思います。 この冷酷な現実を前にして、あなた方は絶望的な気持ちに陥っているのかもしれません。

 そんなあなたがたに、私たちは、「絶望するな! 頑張れ!」と励ます資格はないのかもしれません。
それでも一つだけ、二つだけ、あなたがたに伝えたいことがあります。 一つは、日本全国の圧倒的日本人があなた立ちの側に起っているということ、そして、その中の小さな輪ではありますが、私たち「ガンジーの会」の仲間も、自衛隊撤退を人質解放を求めて、ハンスト・リレーを続けているということ。 それともう一つ、記者会見やテレビの画面で、皆様が「危険な状態が続くイラクに息子や姉を行かせてしまい、結果として日本を揺るがす大事件を起こしてしまったことに対して、「申し訳ない」と謝罪しておられますが、私たちは、その言葉が皆様の誠実な人柄から出てくる言葉であることを重々理解した上で、それでも、あなた方に謝罪する理由はないと考えています。 なぜなら、3人は観光や物見遊山が目的でイラクに入ったわけでなく、NGOの活動と報道取材の目的で危険を承知した上でイラクに入ったのであり、そのことをもって、3人の方が非難される理由はないと考えるからです。 つまり、3人が囚われたのは、イラクの人々が「敵」と認める自衛隊がイラクに駐留しているからであり、非難されるべきは、イラクの復興支援のためにイラクに入っていった日本人が拘束される原因を作った自衛隊のイラク駐留と派遣を強行した小泉内閣にあることは明白な事実です。  さらにまた、戦闘地域化地域からは自衛隊を撤退させなければならないというイラク特措法の条文規定からも、明らかに戦争状態化したイラクから、自衛隊を撤退させなければならないことは明らかです。 つまり、武装ゲリラの要求と関わりなく、現下のイラクの状況からかんがみ、日本政府は自衛隊をイラクから撤退させなければならないのです。

 にもかからわず、皆様が公の場で謝罪の言葉を口にする現場を見るにつけ、私たちは、この事件の責任を武装ゲリラと拘束された3人に転嫁するために、小泉首相や福田官房長官が言わせているように思えて仕方がありません。 おそらく、私たちの知らないことで、さまざまな規制の力が働いているのでしょう。 今、夕方5時過ぎ、TV朝日のニュース番組出演され、コメンテーターから「今のお気持ちとして、自衛隊の撤退を一番要求したいのですか?」と質問され、井上綾子さんが直接その質問に答えず、「一人も犠牲者出ない方法で」と答えておられたことが、そのことを物語っているように思えてなりません。 私たちは、皆様が難しい状況に置かれていることを認識した上で、それでも、皆様が、「イラク特措法の条文規定に基づいて、自衛隊を撤退して欲しい!」という率直なお気持ちを、国民、そして世界の人々に向けてストレートに語りかけていくことを願って止みません。 おそらく、そのことが、この問題を平和的に解決する最も早い捷径であると信じております。

 最後になりましたが、皆様の御家族が一日、一刻も早く皆様の元に戻ってこられることを祈って止みません。 そしてまた、ハンスト・リレーを含めて、事態が平和的に解決されることを求めて、私たちの運動を続けていく覚悟です。

 4月13日                                
            自衛隊イラク派兵反対ハンスト・リレーマラソン
                           「ガンジーの会」




     

  
                                            

 

  a hunger strike reray marathon