5月30日(日)〜31日(月) グループハンスト   飯村孝夫 

 イラクで2人の日本人ジャーナリストが襲撃され亡くなったらしいと報じられた時(二名とも亡くなったか未確認の時点)、インタビューを受けた議員が自己責任ですよ」と発言していました。続いて小泉首相が「残念です」(危険だから渡航を控えるように通告していきたのにということなにか、あるいは亡くなったことに対してなのかはそのニュースではハッキリしていませんでした)という発言が流されていました。「またですか」というニュアンスをその画面から感じてしまったのは極解でしょうか。
 
 橋田さんが生前「たとえ、自分になにが起ころうと国に助けを求めなくてよい」と家族に伝えてあるという発言が映像で流されていました。

 通告や周囲の人の心配に耳を傾け、行かない事も勇気であり、一つの選択だと思います。では、それを振り切って、取材に行くことを選択するのは蛮勇でしょうか。
想像するに、橋田さんにとっては、取材行為は自分の命のすべてであり、取材をする中で命をおとす恐れよりも、行かずに命を永らえる方が堪え難かったのではないかと思います。取材という極めてニュートラルな行為すら、命をおとすという戦争の現実、イラクの現実こそを自分の命と引きかえにしてでも、すべての人に伝えたかったのではないでしょうか。
合掌




5月24日(月)〜25日(火)   飯村孝夫

 前回の断食では国民年金問題で、今回は先週末から今日までは小泉首相の北朝鮮訪問で、イラク問題はまたまたかすんでしまったようです。 それでも虐待問題など問題提起がありましたが、そんな最近のイラク報道の中で、旧大統領宮殿を新政府が樹立された後、アメリカが大使館として使いたいという希望に対して、イラクの評議会や国民が猛反対しているという記事が目にとまりました。

 この記事を読みながら、どうして、アメリカという国は民主主義だといいながらこうも、他の国、民族の文化を尊重にない国なのかと思いました。もし文化音痴という言葉が許されるなら、文化音痴の国なのかもしれません。どんないきさつがあるにしろ、国、民族には築き上げてきた文化があり、建物も一つのシンボルであり、それは経済や国力とは関係なくその国や民族の精神の拠り所のはずです。インディアンの人たちの土地ばかりか文化も取り上げていった精神構造は少しも変わっていないのかもしれません。
 何年か前、ミュージカル「ミスサイゴン」を観た時、仏壇を米兵が靴で
跨いでいくシーンがありました。おそらくイギリスの演出家(ハイトナーでしたでしょうか)は無意識だったと思いますが、どもて傲慢さを感じたことを思い出しました。




5月16日(日)    香取俊介

 アルジャジーラやバグダッド・バーニングなど、英文のウエブサイトをのぞくのが、日課になってしまったが、イラク情勢はいよいよ泥沼化しているようだ。最近、目立つのは、イラク人の死者が目立つこと。占領軍の死者も「戦争終結宣言」以来、700人を越えているというが、イラク側は民間人をふくめると、死者は何十倍にも達しているのではないか。

医療設備が不足し、医薬品もないので、怪我をして後に死亡する人も膨大な数にのぼるにちがいない。
サドル師ひきいる民兵組織の構成員は貧困層の若者……ということだが、想像力をめぐらせて、彼らの「現実」を思うと、胸がいたむ。
彼らの要求は基本的にただひとつ、「自分たちの国は自分たちでつくるから、武力を背景に統治しようとする外国人は出ていってほしい」ということだろう。

きわめてまっとうな要求だが、ブッシュ政権は、6月30日の政権「移譲」を前に、自分たちの統治に都合の悪い勢力はたたきつぶして、自分たちの「利益」になる傀儡政権を樹立したいのだろう。
そもそも戦争の目的が、「石油利権」をはじめとする、中東地域でのさまざまな利権の確保……というビジネス論理にもとづいているので、これまでに投資した資金を回収しなくてはならない。
イラクに民主主義を、などといっているが、今、公正な選挙をしたら、反米政権ができてしまう。そのため、あれこれ理屈をつけて、イラクに止まりつづける。
統治の「実績」をつくるため、さらに占領軍は、しゃにむに武力で反米勢力を制圧しようとし、結果として、女子供もふくめて多くのイラク人の命が失われるにちがいない。

一方、ひるがえって、日本の現状はどうなのか。
最近、産経新聞のウエブサイトに、「ニート」の数が60万人を越えたと報じられていた。ニートとは、「Not in Employment,Education or Training」の略語で英国の労働政策の中から生まれた言葉だという。
一方、定職につかず、短期のアルバイトなどをして暮らすフリーターがいる。
フリーターの数は急増し、内閣府調査で全国で約417万人にのぼり、税収減、年金制度など経済、社会への影響が懸念されているというが、ニートは、この10年で1.6倍に増えているらしい。
ニートは親に寄生しているケースが多く、現金が必要になると、1,2,日の短期のアルバイトをする。社会に出ていく自信を喪失しており、どうなってもいいやという気分で生きているとのこと。

国の将来を考えると、政府も当然、なんとか手を打たなければならないと考えているのだろう。
政治や社会、教育の「システム」の欠陥が背後にあるはずだが、右翼的、国家主義的な言辞が勢いを得ている現在、社会の「通過儀礼」として徴兵制などを復活したほ
うがいいのでは……といった意見が出てきそうだ。
「若者は甘やかされすぎている」「もっと厳しい処置を」「スパルタ教育を」……といった声はよく聞かれることだ。
これは「犯罪が多く治安が乱れている」から、もっと「治安を強化しなければならない」という論理に似ている。

なぜ、治安が乱れ、犯罪が多くなっているか、根本のところを考えず、とにかく強権で、ことにあたろうとする。
アメリカのテロ対策なども、どこか似たものがある。
なぜテロが起こるか。その根本のところに目を向け、テロの土壌を改善することをせず、力(制度や法律)で、これをおさえこもうとする。

イラクの多くの若者が、「国を護ろうと」して、命を失っているのに対して、日本の若者は「ニート」で「個幸」をおうことしかできない。
イラクをこんな状態にしてしまった国は、アメリカのネオコン主導のブッシュ政権であり、それに両手をあげて賛成し、「経済的なおこぼれちょうだい」を期待して自衛隊を送り込んでいるのが、わが小泉政権。その政権のもと、経済的利得を得ている国民の子供が「ニート」あるいは「フリーター」として、将来に希望がもてず、その日暮らしをしている。

図式的に記せば、そんな構図になっている。かけがえのない命を落とすイラクの若者も不幸だが、将来への希望も展望ももてない日本の若者も不幸である。
大人たちの相当部分も、十分、不幸なのに、不幸の根本を覆い隠して、かけ声だけで「改革」を叫ぶ、小泉政権に、いまだに支持をあたえている。

このまま事態がすすむと、10年後、20年後の日本、あるいは世界は、どのようなものになってしまうのか。
生来、オプティミストのぼくも、ペシミスティックにならざるをえない。
社会のすみずみにまで蜘蛛の巣のようにはりめぐらされている「システム」を根本的にあらためないと、すでにどうにもならなくなっている。しかし、多くの国民は、やはり「現状」を変えるのが怖いのだろう。
現状を変えるために、誰でもできる選挙権の行使さえ、これを放棄、結果として現状を追認し、ご用評論家をして「日本人は素晴らしいバランス感覚をもっている」などといわしめている。




5月11日(火)  飯村孝夫

 イラクの捕虜虐待問題が、日本では国民年金問題でかすんでしまっているのが気がかりです。しかし、国民年金問題は色々教示してくれました。そのいくつかを挙げ
て見ます。

1−舞台の本番では、練習どおりいかなかったり、さまざまなハプニングが生じます。その時、ハプニングや失敗にすぐ対応でき、あたかもそれが必然であるかのように演じたり、歌ったりできる人は本当の舞台人、あるいはプロなのだと思います。つまり、問題が生じないことより、生じた時にどう対処できるかが、プロとしての勝負どころなのですが、国会を見ていると???

2−国民年金未納国会議員が次々と出てくるのを見ていると、議員さん方は国民年金を自分たちを含む国民の問題なのだと心底考えているのか、疑ってしまいます。そう問われれば、もちろん考えていると答えるでしょう。でも、実感がないのだと思います。そのお金だけを頼りにしている人、払うことで将来保証されるお金がどのくらいになるのか、そう考えている人たちの実感を想像できないのではないでしょうか。

3−その一方で、我々国民の方も、国会議員を槍玉に上げることで終わってしまい、イラク問題でもあまり声があがらないのと同じように、この問題が本当に自分たちの問題だという認識が十分でないようにみえます。そう思うのは、私の情報不足なのでしょうか? この際、国民年金(6万円位)だけでひと月だけでも生活してみて、その上で、月収が20万円前後としてでそこからさまざまな必要経費を引いた上で、年金として1万3千円支払い、残りの額でどのくらいの生活ができるか体験し手見る。その上で、この問題をもう一度考え直してみるというのはどうでしょう。





5月1日(土)〜2日(日)    香取俊介

 5月2日、正午、8回目のハンスト、終了しました。
イラク兵捕虜に対するアメリカ軍の組織的な虐待や、ファルージャの包囲攻撃などで、イラクばかりでなく、中東全体で反米気運が高まっているようです。
このままだと、大著『文明の衝突』で、サミュエル・ハンチントンが指摘していたキリスト教文明とイスラム文明の「文明の衝突」がいよいよ現実のものになってしまいます。

世界人口の4人か5人の1人がイスラム教徒ということを考えると、これは大変な事態で、日本も深刻な余波をうけることになります。

「異文化」への理解を欠いた「欲望むきだし」の権力者ほど、困った存在はありません。
こういう事態をまねいたブッシュ政権に、「国益、国益」といって、ひたすら追従するだけの小泉政権。
この政権のやっていることは、果たして長い目で見て本当の「国益」つまり、一部既得権益層だけでなく、多くの国民の「利益」になっているのか、なる可能性があるのか……。
小泉政権に、50パーセント以上もの支持を与えている人たちは、もっといろいろな情報を得て、マスコミに頻繁に登場するご用評論家の意見にうなずくだけでなく、自分の頭で深く考えてもらいたいものです。

もっかの情勢では、7月の参議院選で自民党は圧勝、秋のアメリカ大統領選でも、ブッシュの勝利……という観測がマスコミなどにでています。

映画や演劇など芸能の世界ならともかく、「感性」とか「イメージ」で、政治的選択をすることが、いかに危険か。
情緒的に訴えるテレビメディアでしか情報を得ていないと、「感性」や「イメージ」で、CM同様の論理で仕掛けてくる巧妙な戦術に、将来への漠然とした不安をかかえている人たちは、容易にのせられてしまいます。

日常の不安、将来への不安心理を、巧みに利用して、国民をある方向に導いた天才
が、あのナチスドイツで活躍したゲッペルス宣伝相です。
彼のやり方は、大衆心理の操作の模範として、現在も生きています。
多くのCMやPRは、意識している、いないにせよ、ナチの大衆操作のやり方を踏襲しています。

基本にあるのは、「単純化」と「繰り返し」です。
小泉総理の記者会見などにみられる「ワンフレーズ」は、その典型です。
一見、わかりやすく、俗耳にはいりやすい。

人がものを考えるのは「言語」によってです。想像力も「言語」を介在しています。
「活字離れ」は、ますます「扇動に弱い」「感性」や「イメージ」偏重の人間を育てていきます。
彼らは、大衆操作をする側にとって、もっとも御しやすい人たちです。

どうも、そちらが、日本ばかりでなくアメリカでも、多数派になっている……。
情報が統制されている独裁国家ならともかく、両国とも一応言論の自由が保証され
ている国です。

無数の情報にアクセルできる環境にありながら、常に受け身でいると、自分でも気づ
かぬうちに、エーテルのように社会をおおう「空気」にどっぷりとつかり、異常を異常と思わなくなっていくようです。
相手側の身になって考える「想像力」が摩滅し、欠如していくのだと思います。

繰り返しますが、想像力を裏で支えているのは、「言語」「言葉」であるのですが、政治からも社会からも「言語」「言葉」が軽視されている。
ぼくなど映像にかかわりつつも、根は「活字文化」で育った人間には、今の日本を覆っている「想像力の欠如」は、ゆゆしき状況です。




4月25日 飯村孝夫


 4月18日(日曜日)午後2時から、僕の演出したオペレッタ「こうもり」が、赤羽会館で上演されました。
これまでオペラとあまり縁のなかった赤羽に「オペラを!」という趣旨で、僕が音頭を取って立ち上げ、北区の文化事業の一つとして行われたものです。
今回、第一回目の公演として、浅草オペラ全盛期に盛んに上演されたシュトラウスの「こうもり」を取り上げました。おかげさまで、立ち見が出るほどたくさんの方が足を運んでくれ、オペラを楽しんでもらえました。
ハンストを続けながらの厳しい戦いでしたが、最後までやり遂げることができてよかったと思っています。来年は、永井荷風の「葛飾情話」を取り上げたいと思っています。

というわけで、やれやれと一息入れ、翌日のお昼からハンストに入り、20日の正午に終えましたが、その夜、ライブのコンサートで歌うことになっているので、午前中少し声を出して調子を整えておこうと発声練習したのですが、さすがに空腹がこたえました。

ところで、この2、3週間、人質問題、とりわけ自己責任が話題になりました。要するに危険を承知で渡航し、自らその状態を招いたのだから、いまさら国に救助を要請することもないだろうというのがその論旨のようです。
この論理でいくと、例えば、川辺で危険を告げる看板があるにもかかわらず入り込み、溺れかけている人を助けようと飛び込み、自分が溺れかけても、救助を求めたり、医師から手当てを受ける権利がないということになります。

医師は、犯罪者であれ、敵国の人間であっても、命を救うことが使命であり、そのために最大限の努力を尽くすことが義務なのではないでしょうか。
国もまた、警告を無視したかどうかにかかわらず、命を救うために最大限の努力をするからこそ、国民は自国の政府に全幅の信頼を寄せるのではないでしょうか?




4月15日(木)   山川とも子

兵庫県の山川と申します。心無い一部の人達の嫌がらせに対して、この上ない程の 怒 >りを感じています。
恐らく右傾の人達でしょう。直接目にした場合は、私の方からも「それは間違っている」と諭しています。
日本人の多くの人達は、それはそれは自分のこととして、心配しています。決して 卑 屈にならず、断じて臆さずに、時期を待って下さい。
この前の日曜日に私も東京で 貴方達の姿を拝見し、言葉を聞き、出来る事は何でもしたい思いでいっぱいです。
兵 庫の地より、必死で祈ってます。
なおこさんのお母さんの「空に希望」という詩をあるサイトで見ました。涙が出ま した。本当にそうです。空はみんな繋がってます。そして、地球上の民衆の心も繋 がってます。
三人と他国の人質の人たちもイラクの犠牲者も、アメリカをはじめとする軍の犠牲者も、皆、ワシントンで夜毎に高級ワインを飲んで高笑いをしているあいつ等の犠牲者です。
小泉首相に謝ることなんかありません。こんな世界と日本にしてしまった張本人ではないですか。
でも、三人の命がかかっているこの時期は彼ら(政治家)を刺激しないようにしながら、訴えていく事にしています。

共に希望を持って祈りましょう。